今回のAI翻訳比較アンケートは、中国語簡体字となります。
中国語簡体字は、中国本土で主に使用されている言語で、北京語などと呼ばれる場合もあります。
意外なことに中国本土以外にもシンガポール、マレーシアなどでも使用されおり、シンガポールでは人口約570万人のうち中国系住民が約74%を占めており、簡体字が教育や公的な場面でも使用されています。マレーシアも同様で、マレーシアの人口約3,300万人のうち中国系住民が約23%となっており、教育やメディアなどでも簡体字が使用されています。
中国語簡体字の推定利用者数の合計 約14億3,000万人以上
- 中国本土:約14億人
- シンガポール:約420万人(中国系住民約74%の割合を考慮)
- マレーシア:約759万人(中国系住民約23%の割合を考慮)
- その他の地域(世界中の中国系コミュニティ):約2,000万人(非常に大雑把な推定)
世界の言語ランキングでは、1位の英語の話者人口が推定約15億~20億人で、中国語の約14億人は2位となっており、3位のスペイン語の約5億人には大差をつけています。そもそも中国本土の人口が多いというのがありますが、単純に利用者数で比較すると英語とほとんど変わらないぐらい利用者が多い言語となっています。(ちなみに日本語は1億2,600万人で11位となっています)
【2024年最新版】世界の言語ランキング(ネット人口含む)
アンケート投票実施要項
- 対象サービス:「Google翻訳」「DeepL翻訳」「ChatGPT3.5」の3種
- 言語ペア:日本語から中国語簡体字への翻訳
- アンケート対象者:翻訳業界に従事しており、中国語(簡体字)を理解できる関係者(翻訳チェッカー、翻訳者、翻訳会社社員等)
- 日本語原文:架空の商品に関する説明文
- 備考:アンケート投票時には、先入観をなくすため、どの訳文がどのサービスによるものかは伏せています
日本語原文
エメラルドメロン
<エメラルドメロンの名前の由来>
長い試行錯誤の末、エメラルドメロンが市場にデビューしたのは1992年5月。5月の誕生石はエメラルドであり、南国の太陽の光を浴びた太平洋もまたエメラルド色に輝いていたことから「エメラルドメロン」と名づけられました。
夜須町の温暖な気候を活かしたハウスの中で、エメラルドメロンは1本の苗にたった一玉だけしかつくりません。収穫までの約90日間、最高の糖度を引き出すために水分を微妙に調整しながら育てるのは、たいへん高度な技術が求められます。
美味しく食べるためのポイント
・常温で追熟してください。冷暗所や冷蔵庫の中に入れると熟成しません。
・冷蔵庫で約2時間冷やしてお召し上がりください。長時間冷やすと、糖度が低下します。
【訳文A】
翡翠瓜
<翡翠瓜名字的由来>
经过长时间的摸索,翡翠瓜于1992年5月首次上市。五月的生日石是祖母绿,“祖母绿瓜”这个名字来源于太平洋在热带阳光的照射下闪耀着祖母绿的颜色。
在利用安町温暖气候的温室里,每颗翡翠瓜苗只结出一颗珠子。
需要极其先进的技术来种植葡萄,同时精心调整水分含量,持续约 90 天直至收获,以发挥出最高的糖分含量。吃得美味的秘诀
・请在室温下熟化。如果你把它放在阴凉、黑暗的地方或冰箱里,它就不会成熟。
・放入冰箱冷藏约2小时即可享用。如果冷藏时间过长,糖分含量就会降低。
【訳文B】
翡翠瓜
<翡翠瓜 “名称的由来。
在利用安町温暖气候的温室里,每颗翡翠瓜苗只结出一颗珠子。需要极其先进的技术来种植葡萄,同时精心调整水分含量,持续约 90 天直至收获,以发挥出最高的糖分含量。
在利用 Yasu 镇温和气候的温室中,每株幼苗只生产一个祖母绿甜瓜。 在 90 天的采收期内,既要种植甜瓜,又要巧妙地调节含水量,以获得最佳含糖量,这需要非常高超的技术。
美味小贴士
在室温下成熟。 不要放在阴凉处或冰箱里,因为它们不会成熟。
食用前冷藏约 2 小时。 冷藏时间过长会降低糖分含量。
【訳文C】
翡翠蜜瓜
<翡翠蜜瓜名称的由来>
经过长时间的反复试验,翡翠蜜瓜于1992年5月正式上市。5月的诞生石是翡翠,而在南国阳光的照耀下,太平洋也闪耀着翡翠色的光芒,因此被命名为“翡翠蜜瓜”。
在夜须町温暖气候的温室中,翡翠蜜瓜每株苗只结一个果实。为了在大约90天的生长期内达到最高的糖度,需要精细调整水分,这是一项非常高超的技术。
美味食用的要点:
・请在常温下催熟。放在阴凉处或冰箱中不会成熟。
・请在冰箱中冷藏约两小时后食用。冷藏时间过长会导致糖度降低。
アンケート投票
今回のアンケートでは回答数を集めやすいように、以下のように非常にシンプルな質問形式のみとしました。
Q1. A,B,Cどの訳文が一番よかったですか?(必須)
「A」の訳文への評価(未回答可)
「B」の訳文への評価 (未回答可)
「C」の訳文への評価 (未回答可)
アンケート結果
2024年6月10日現在、回答数は5件で、その5件とも【訳文C】が今回は最もよかったと答えています。
訳文「A」「B」「C」はどこのサービスなのか?
今回の各訳文は以下のサービスとなっています。
【訳文A】Google翻訳
【訳文B】DeepL翻訳
【訳文C】 ChatGPT
それぞれの訳文に対するコメント
翻訳のチェックを仕事としているプロの翻訳チェッカーが、各訳文に対してどんなコメントをしているのか紹介していきますが、中国語簡体字の場合、基本的なチェック項目は以下となります。
- 訳抜け・訳漏れ(訳していない部分がある)
- 誤訳(間違いがない)
- 誤字・脱字
- 表記(スタイルガイド等に基づく表記)
- 固有名詞など(人名、地名、専門用語等)
- 流暢性(読みやすさ、適切な文章表現)
【訳文A】に対するコメント
誤訳が多い、長い文章の翻訳ができていない
中国語文章だけを読んでも変な言葉使いや論理的でない表現があったり、途中「メロン」が「グレープ」になったりしていて、不合格だと思います。 翻訳にも地名などの誤訳もあります。
不自然な表現や誤訳の指摘が多かったようです。「メロン」が途中で「グレープ」になってしまうのは確かに致命的ですね。
【訳文B】に対するコメント
符号の誤用、誤訳、訳漏れが多い
翻訳としても中国語文章としても一番品質が低いです。Aの問題点もありますし、名前の由来の段落が消えていて、地名も英語表記になっています。
こちらは訳抜けの指摘があります。「DeepL翻訳」の訳抜けはかなり有名な話ですが、今回も訳抜けが発生していたようです。
また英語表記については、翻訳のしようがない固有名詞などについては英語のローマ字で表記する場合もあるので、そこはギリギリセーフという気もします。
【訳文C】に対するコメント
三つの中で一番完成度が高いです。意味が通じでいますが、表現が硬いです。
翻訳としてほぼ問題点がありません。中国語だけを読んでも全然読みやすい文章になっております。
表現が硬い(流暢さに欠ける)という指摘がありますが、上記2つで指摘されていた誤訳や訳抜け等はないようです。
アジア言語同士の翻訳について
日本語から英語への翻訳など、英語が関係する翻訳については、非常に品質が高くなってきているAI翻訳ですが、実はアジア言語同士の翻訳についてはまだそれほど精度は高くありません。
「Google翻訳」にしても「DeepL翻訳」にしても、開発元が欧米圏になるため、どうしても英語やヨーロッパ言語を中心とした開発になってしまうのかもしれません。
また、中国本土ではGoogle系のサービスが使えないことが多く、高品質な機械翻訳モデルを作成するためには大量の翻訳データが必要となってきますが、その辺りのデータ収集が足りていないという背景があるのかもしれません。
そして今回、AI翻訳の中で比較的評価が高かったのが「ChatGPT」ということになります。「ChatGPT」 もアメリカのサンフランシスコに拠点を置く、人工知能(AI)の開発および普及を目的とした非営利研究機関「OpenAI」が開発を行っておりますが、生成AIという点が 「Google翻訳」や「DeepL翻訳」とは大きく異なっており、 AI自身が自ら学習し続けて、人間から与えられていない情報やデータさえもインプットしていくという生成AIの特徴が、今回の翻訳品質の差に影響しているのかもしれません。
全世界の利用者数だけで見れば、英語に肉薄するぐらいに利用者数が多い中国語ですが、AI翻訳の中国語(簡体字)の精度はまだまだこれからに期待と言ったところでしょうか。
Baidu翻訳について
上述のように中国本土ではGoogle系のサービスを利用できないことが多く、中国における「Google」の立ち位置に相当するのが 「百度(Baidu)」となっています。
「Baidu翻訳」は中国のインターネットサービス大手「百度(Baidu)」が提供するオンライン翻訳サービスで、多言語間の翻訳を提供しており、テキスト、音声、画像の翻訳なども可能です。
そこで、今回のアンケートとは別に、中国国内に居る回答者に「Baidu翻訳」の評価を聞いてみましたが、以下のように翻訳品質も「Google翻訳」と同レベルとの回答でした。
Google翻訳と同じくらいのレベルで参考程度には使えますが、品質がいいとは言えません
次回は「Baidu翻訳」の訳文も交えて、アンケートを実施してみたいと思います。
今回ご協力いただきましたみなさま、誠にありがとうございました。
今後も定点的にアンケート対象者を変え、日本語原文のスタイルを変えて、様々な角度からアンケートを取っていきたいと思います。