海外への情報発信やEコマース、インバウンドの訪日外国人対応、日本在留外国人への情報提供等々、今や様々なシーンで多言語化が求められる時代となりました。そんな状況の中で、サイト多言語化の必要に迫られているという企業も多いのではないでしょうか。
ここでは、サイトを多言語化するにあたり必要となる「WEBサイトの翻訳」に、各社がどのように取組んでいるか、簡単にまとめてみました。
人が翻訳する場合
海外拠点に現地サイトの運営・管理はお任せ
海外に複数拠点を持つグローバル企業(例えば自動車メーカー、機械メーカー、製薬会社、飲料メーカー等々)では、海外拠点にその国(地域)のWEBサイトの構築、運営・管理をすべて任せているというケースがよく見受けられます。
現地の市場を踏まえ、現地の文化や習慣、法律に合わせてコンテンツを調整したり、その国で好まれている色やデザインなど、サイトの見た目を大きく変えていく、完全ローカライズというパターンになります。
ただこの場合、日本法人のサイトを多言語化したというよりは、もはや海外拠点のサイトということになってしまいますので、それとは別に日本法人のサイトを別に多言語化するというスタンスの企業も多く見られます。
外国語に精通した社内スタッフが翻訳する
英語なり中国語なりに精通している社内のスタッフが日本語のサイトを翻訳しているというのもよくあるパターンとなります。
この場合は、翻訳の外注費はかかりませんが、社内リソースを使っていることになりますので、人件費という視点で見た場合、どちらがコスパがいいのか考える必要があります。
また翻訳を担当している社内スタッフも選任という訳ではなく、兼任で他の業務の合間に翻訳していたりしますので、翻訳が完成するまでにそれなりに時間がかかるというケースがほとんどです。
その結果、やはり日本語サイトのすべてを多言語化するという訳にはいかず、必要性が高い箇所から優先的に翻訳していくこととなり、日本語のページ数に比べて圧倒的に多言語のページが少ないという状況になっていまいます。
翻訳会社に依頼する
社内で翻訳が出来るリソースがいない、または社内リソースで対応するにはあまりにも効率が悪いということになると、外注をするという選択しかありません。
そこで登場するのが翻訳会社となります(翻訳会社については、当サイトの姉妹サイト「翻訳会社マイスター」にて取り扱っておりますので、そちらをご参照いただければと思います)。
その翻訳会社なのですが労働集約型産業でもありますため、過去に一度も翻訳会社に翻訳したことがないという人の感覚でいくと、それなりの外注費用が発生します(翻訳会社の料金が気になる方は「翻訳会社マイスター」の料金に関する記事をご覧ください)。
そのため、翻訳会社に翻訳を依頼するにしても、予算との兼ね合いを見ながら、やはり必要性が高い箇所から優先的に多言語化していくということになります。
例えば、日本語サイトに掲載されている代表メッセージや会社概要、サービス概要などを数ページに集約して、その数ページのみを多言語化しているというのも企業サイトではよく見られる手法です。
WEBサイト翻訳ツールを利用する
自動翻訳
もう一方で、人手を介さず機械に翻訳させるMT(Machine Translation)を使った方法があります。機械と言っても今はAIが翻訳するという方式が一般的なものとなっています。
WEBサイトを見ているユーザー側のブラウザにプラグインなどが入っていると、海外サイトを自動で翻訳してくれる機能のウインドが出て来ることがあるかと思いますが、あれもAIを使った自動翻訳となります。
中には「うちは国内だけのドメスティックなサービスで、海外への情報発信もほとんど必要ないし」ブラウザの翻訳プラグインで十分だと言われる企業のWEB担当の方もおられます。
確かに多言語化する必要性があまりないようであれば、お金をかけずに済みますし、ブラウザのプラグインにある翻訳機能でも十分なのかもしれませんが、ただこちらの場合だと商品名やサービス名などの重要な部分で誤訳が発生していても、企業側でそれを修正することが出来ず、ずっとそのままになってしまう可能性がありますので注意が必要です。
AIが飛躍的に発達し、自動翻訳の精度も相当に高レベルとなって来てはおりますが、まだ固有名詞(人名や地名、商品名、サービス名など)、業界に特化した専門用語などには弱いという側面が自動翻訳にはあります。
自動翻訳 + 辞書登録
その問題を解消してくれるのが辞書登録という機能になります。自動でWEBサイトを翻訳してくれるWEBサイト翻訳ツールのほとんどにはこの辞書機能が搭載されています。
人名や地名、商品名、サービス名、専門用語を事前に辞書に登録しておくことで、個有名詞などは登録されている通りの対訳にてきちんと翻訳されます。
こちらは以前から、予算はあまりないが多言語化の必要に迫られているという点で、自治体や公共機関等で多く導入されて来ました。ただ、昔はそれでも自動翻訳の品質がそれほど高くなく誤訳も多かったために「このサイトは自動翻訳にて翻訳されています」などの注意書きを掲載するなどしており、この一文を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
自動翻訳 + 辞書登録 + 人による編集
そして今では、上記の「自動翻訳 + 辞書登録」に加え、自動で翻訳された訳文を後から人間がチェックして修正出来るという編集機能付きのツールが広く浸透して来ています。
AIの発達により「日本語から英語」に関しては、辞書登録がされていれば自動翻訳でもほぼ間違いはない(文章の美しさ、表現力等を除けば)というレベルにまで達して来ておりますが、アジア言語同士では自動翻訳の品質はまだ十分とは言えず、「日本語から英語」に比べて劣ってしまうという側面があります。
ですので、複数言語で多言語化したい場合などには、こうした人間によるチェックや修正が出来る機能が付いたツールを検討したほうがよいかもしれません。
今回の説明は以上となりますが「翻訳会社に翻訳を依頼してサイトを多言語化する場合と、WEBサイト翻訳ツールを導入した場合、コスト面での比較はどうなのか?」などの気になる点については、また別の記事にてご紹介出来ればと思います。