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サイト多言語化

地方自治体におけるサイト多言語化対応

現在、日本で暮らしている在留外国人は322万人とされており、この数は現在もなお増え続けています。

サイト多言語化の必要性を考える上で兎角インバウンド対応の点ばかりが注目されていますが、むしろ早急に対応しなくてはならない状況に直面しているのが、自治体等の地方公共団体なのです。

在留外国人の内訳

法務省の2023年6月時点の調査によれば、在留外国人の内訳は下記のようになっています。

TOP10内にブラジル、米国が入ってはいますが、その大半はアジアの出身者となっています。

また、日本の各地域によって在留外国人の出身国は大きく異なっており、例えば、静岡や愛知などでは、日本を代表するようなメーカーの大規模工場が複数存在し、昔から労働力として外国人を受け入れていた時代背景もあって、ブラジル人が圧倒的に多く、数万人規模のコミュニティも存在しているようです。

ブラジル日報(2022年1月18日)

「在日ブラジル人は20万6365人=在留外国人統計調査=愛知に6万人、静岡に3万人」

https://www.brasilnippou.com/2022/220118-21colonia.html

日常生活において、困りごとを抱えている在留外国人

外国人の内訳で上位TOP10のうち、大半はアジアからの外国人で占められていますが、日本の多言語化対応の現状としては、英語、中国語、韓国語がメインとなっており、その他の言語については消極的というのが実情です。

法務省の出入国在留管理庁の「令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の調査結果の概要」では、在留外国人が「日常生活において抱えている困りごと」として以下のような内容が挙げられています。

令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の概要
出典:https://www.moj.go.jp/isa/content/001342229.pdf

こちらの画像では見づらいかと思いますので、改めて以下にピックアップします。

公的機関が発信する情報を入手する際の困りごと

1位 多言語での情報発信が少ない(33.8%)

2位 やさしい日本語の情報発信が少ない(23.4%)

3位 スマートフォン等で利用できる公的情報(市町村・都道府県・国)が作成したアプリの情報が少ない(16.8%)

公的機関に相談する際の困りごと

1位 どこに相談すればよいか分からなった(31.4%)

2位 相談するために仕事や学校を休まなければならなかった(27.8%)

3位 通訳が配置されていなかった又は少なかった(20.4%)

災害時の困りごと

1位 信頼できる情報の情報源が分からなかった(12.6%)

2位 避難場所が分からなった(10.2%)

3位 警報・注意報などの避難に関する情報が、多言語で発信されていないため分からなかった(9.8%)

上位TOP3には多言語での情報発信不足による困りごとが多く、災害時などの緊急性が高いものに関しては対応が急務であると言えるでしょう。

地方自治体のサイト多言語化対応

もちろん、各自治体でも多言語対応は進められており、むしろその取り組みは民間企業よりも古くから行われている印象があります。ただ、やはり以下の資料を見ても、英語、中国語、韓国語の対応が多数で、それ以外の言語はまだ少ないことが分かります。

「日本における自治体ウェブサイトの多言語化の現況と課題」2020年
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/its/20/0/20_2001/_pdf/-char/ja

また、人間による翻訳ではなく、機械翻訳を導入して多言語化対応している自治体が非常に多いというのも特徴です。機械翻訳を導入してきた背景としては、上述のような即時性を考慮してということもありますが、予算の問題というのもあげられます。翻訳会社に翻訳を依頼すると初期費用だけでなく、ランニングコストにも相当な費用がかかってしまうため、予算が限られている自治体などでは機械翻訳を導入して多言語化対応が行われてきました。

自治体のウェブサイトで導入されている機械翻訳システム

自治体のウェブサイトで主に導入されている機械翻訳システムの内訳は以下の通りです。

「日本における自治体ウェブサイトの多言語化の現況と課題」2020年
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/its/20/0/20_2001/_pdf/-char/ja

「Google翻訳」はニューラル翻訳を採用しており、APIなども提供されているため、比較的コストや手間をかけずに導入できることもあり、特に予算をあまりかけられない市町村では圧倒的に導入数が多くなっています。

次いで、昔から機会翻訳を提供してきている高電社の「Myサイト翻訳シリーズ」と、クロスランゲージ社の「WEB-Transer@ホームページ」となっていますが、こちらは両方ともルールベース翻訳(文法翻訳)となっています。

市町村合同の在留外国人のための多言語ポータルサイト

市町村レベルの機関では予算をあまりかけられないため、これまでに充分な多言語対応ができなかったというケースが多々ありましたが、最近では同県内の複数市町村が協力して在留外国人向けの多言語ポータルサイトを運営するという動きも見られます。これなら、一団体では導入できなかった多言語化対応の費用を、複数の団体で出しあって賄うこともできます。

自治体のサイト多言語化対応の現状と今後

自治体では、在留外国人に対する多言語での情報発信という必要性があったため、かなり早くからサイトの多言語化対応を進めてきましたが、それゆえに以前から継続して導入しているシステムが古くなっている、ルールベース翻訳をまだ採用しているなどの問題点があります。

しかし、一方で生成AIである「ChatGPT」を導入しようとする動きなども見られており、今後、各自治体で現在の翻訳システムの乗り換えを検討する動きが加速していく可能性があります。

「やさしい日本語」

最後に、「令和2年度 在留外国人に対する基礎調査の調査結果の概要」の中にも出ておりました「やさしい日本語」について触れてきたいと思います。

日本に住む在留外国人も日々日常生活の中で日本語を学んでいるので、日本語がまったく読めないというわけではありません。ただし、自治体がサイトで情報発信している漢字が多く並んでいる日本語は彼らにとってはまだ難しいのです。

そこで、「やさしい日本語」という概念が最近注目されています。ただし、まだ「やさしい日本語」の認知度は低く、今後どれだけ浸透して、実際に取り組まれていくかは未知数です。

「やさしい日本語」については、機会があればまた別の記事にてご紹介できればと思います。

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