用語集、対訳表の準備はお済みでしょうか?
まずは、これまでに英訳されて来た過去の翻訳資産を、最大限に活用していくことが重要です。新規事業を立ち上げた、事業を大きく方向転換したなどの出来事がなければ、日本語原稿に出て来る用語等も毎回それほど大きく変わるものではありません。
一番最初に、用語集や対訳表を事前に作成する手間はかかりますが、毎回使いまわしていくことが出来ますので、長い目で見ればはるかに効率化されるということになります。
用語等の差替えについては、翻訳支援ツールなどが使えれば理想的ではありますが、エクセルを駆使して差替えに対応するなどの方法もあります。
人的の手動によるコピペでの差し替えは、先頭(末尾)の文字だけが選択範囲外だったなど、逆にミスを起こしやすく、チェックにかかる時間が却って長くなるというケースも発生しますので、置換が得意なツールの機能に任せてしまった方がいいでしょう。
テンプレート化はお済みでしょうか?
決算短信などは、後半は毎回数字が異なっているだけで、書式が全く一緒という場合も多く、テンプレート化して、フォーマットを予め作成しておくと、開示までの時間短縮につながります。
ただし、予め作成しておいた英語のフォーマットに、人的の手動コピペで数字を移し替えるというのは、結果的に数字チェックに膨大な時間がかかったという結果に陥りやすく、こちらもツールを利用するなどして処理したほうがいいでしょう。
ことIRに関しては、英訳のミスよりも数字のミスの方がはるかに致命的になってしまう、ある意味特殊な分野と言えるかもしれません。
英語販はページ数を減らすという手もありますが……
各社様の決算短信等を拝見させていただくと、日本語のPDFページ数が10ページを超えているのに対し、英語販のPDFが5ページ弱しかないというケースが散見されます。
本来、日本語の原稿を英語に翻訳した場合、文字数(キャラクター数)が大幅に増えるため、翻訳された英語の分量は、日本語の分量の約1.5~2倍ぐらいにはなります。それなのに英語版のページ数がはるかに少ないということは、日本語版を全て翻訳せずに、必要最低限しか英語に翻訳していないということになります。
時間短縮、コスト、労力、手間の削減ということで考えると、確かに方法の一つではあります。ただ、今回の英文開示の本旨からすれば、英語だけ情報量が少ないというのは、言語ごとの公開情報量の公平性に欠けるということになってしまうかもしれません。
翻訳品質を無視した場合の、最短工程について考える
英語の翻訳品質を最低限でよいとした場合、最短の工程は以下になるのではないかと思われます。
日本語原稿作成
↓ 事前準備(テンプレート、用語集、対訳表などをフル活用)
↓ 残った日本語をAI翻訳にかけて英語にする
↓ 社内ネイティブスタッフによる英文チェック(修正など)
↓ 担当者による最終チェック(数字、レイアウト等全体チェック)
この工程のどこかを外注に出したり、チェックの回数が増えたりした場合、その分だけ時間が加算されていくということになります。
またこれはあくまで英文の品質にこだわらない場合ということになりますので、翻訳の品質にこだわる必要があるのであれば、はじめから翻訳会社等に依頼する方が結果として早いかもしれません。