改めて、「AI翻訳」とは何か?
数年前までは「自動翻訳」や「機械翻訳」と呼ばれていましたが、ここ数年で「AI翻訳」という言葉が大分浸透してきたという印象があります。
AI翻訳(Artificial Intelligence Translation)は、人工知能(AI)を使用して、1つの言語から別の言語へ、テキストの翻訳を行う技術です。
機械翻訳(Machine Translation)の一種でもあり、機械学習や自然言語処理(NLP)の技術を活用し、大量のテキストデータを学習することで、文脈や文法を理解して、より自然な翻訳を生成することを可能としています。
AI翻訳は、オンラインコンテンツの翻訳、通訳、ビジネス文書の翻訳など、さまざまな場面で利用されており、一度は「Google翻訳」や「DeepL翻訳」を使ったことがあるという人が多いのではないでしょうか。
今やAI翻訳の代名詞とも呼べる「Google翻訳」
今やAI翻訳の代名詞とも呼べる「Google翻訳」ですが、AI(人工知能)技術を最初に採用したのは2016年と比較的最近のことです。上述のようにAI翻訳では、学習のために大量のデータ(コーパス)を必要とするため、当時はまだ本当に実現可能なのか疑問視する声もありました。
現在、双璧をなしているのが「DeepL翻訳」
学習データを大量に必要とするため、「AI翻訳」を実用レベルまで引き上げることが出来るのは「Google」か「Microsoft」ぐらいしかないのではないかと当時は予想されていましたが、2017年に突如、新星のごとく「DeepL翻訳」が現れます。
他の自動翻訳サービスよりも優れた翻訳精度を提供することで話題になり、翻訳業界をはじめとして、ビジネスシーンで一気に注目を集めることになりました。
「Google翻訳」と「DeepL翻訳」の長所と短所
現在、翻訳業界で最も評価が高いAI翻訳は「DeepL翻訳」となります。その特徴としては、翻訳した際の文章の流暢さや表現力の高さなどが挙げられます。
しかしながら、無料版では時々「訳抜け」が発生するということでも有名です(日本語原稿の途中の一文が英語では見当たらない等)
また、地名や人名、固有名詞などの単語レベルで比較的誤訳が多いという欠点もあります。
一方で「Google翻訳」は、文章表現などでは「DeepL翻訳」に劣るものの、単語レベルにおいては非常に強く、これまで単語を軸にした検索サービスで成長してきた「Google」ならではの強みが見られます。
AI翻訳の評価、日本語から英語への翻訳
弊社でも定期的にAI翻訳の訳質を調査しておりますが、日本語から英語への翻訳に関しては、現時点でも70〜80点のレベルに達しており、平常のビジネスシーンで使っても問題ないと判断しています。ただし、上述のようなミスが発生する場合がありますので、それなりに人間のチェックが必要になるかもしれません。
また、AIによる英語から日本語への翻訳に関しては、間違いはないが、日本語ネイティブの我々からすると違和感を覚える文章というレベルのようです。
AIによる翻訳をチェックする方法、バックトランスレーション
バックトランスレーションとは、翻訳会社が通常の翻訳サービスで翻訳の品質を検証する際にも使われる手法となります。
例えば、日本語の原稿をAI翻訳で英語にした場合、AIが翻訳した英語を今度は逆に「英語から日本語」にAIで翻訳させてみます。
それで元の日本語原稿と内容に齟齬がなければ、翻訳の内容に間違いはないという判断が出来ます(文章表現力などは別として)。
アジア言語同士のAI翻訳、言語ペアの相性
英語に関しては、現時点でかなり高評価を得ているAI翻訳ですが、これがアジア言語同士の言語ペアとなりますと、まだまだというのが正直なところです。
「Google翻訳」や「DeepL翻訳」にしても、そもそも欧米圏発祥のサービスとなっており、欧米言語が先行して開発されています。そのため、アジア言語同士の組み合わせでは、まだ英語の品質と同等レベルに達していないということでしょうか。
日本語 ⇔ 中国語簡体字・繁体字などの場合は、やはりチェックを行った方が無難だと思われます。
また、日本語からヨーロッパ言語への翻訳でもそうですが、アジア言語のベトナム語やタイ語、インドネシア語などの場合には、日本語の原稿から翻訳するのではなく、まずは正しい英語訳を作成し、その英語訳から他の言語に翻訳することを推奨しております。
新興勢力「ChatGPT」
現時点で、AI翻訳の双璧は間違いなく「Google翻訳」と「DeepL翻訳」だと思われますが、昨年話題になりました「ChatGPT」を使った翻訳というのが、ここ最近で急激に評価を上げてきています。企業や団体によっては、「DeepL翻訳」よりも「ChatGPT」を評価し、採用しようとしている場合もあります。
ただ、ご存知かとは思いますが、「ChatGPT」の回答精度というのは質問になるプロンプトによって大きく左右されてしまいます。実際に翻訳で「ChatGPT」をご利用の際には、「ChatGPT 翻訳 プロンプト」等で検索して、プロンプトについて事前に調べておいたほうがよいでしょう。
AI翻訳に向いていない原稿内容
AI翻訳が、通常使えるレベルまでに品質が上がってきているとは言え、内容に関してシビアな契約書などに関しては、やはり従来通り人間が翻訳した方がよいでしょう。
また、AIの翻訳は間違いがないことを重視して翻訳を行いますので、その分平坦で特徴のない文章になりがちです。また、同様の理由で、省略などが出来ませんので、同じ言葉(主語など)を何度も繰り返す、回りくどい表現にもなりがちです。
キャッチコピーのような文は、AIに翻訳させるととんでもないことになりますし、メッセージ性が強い文章(例えば、WEBサイトの代表からのメッセージなど)は人間が翻訳すべきだと思います。AIによる翻訳では、やはり人間が書くような熱量がこもった文章は、まだ書けませんので。